しかしそんな悩んでいるアカモリを差し置いてアオキが声をかけてきました。
「おい、アカモリ!いくぞ!」
「いくってどこへ?」
「いいから」
そういいながらアカモリの腕を引っ張ります。
「ちょ、ちょっとどこにいくんだよ」
そのままふたりは教室をでていきました。
アオキの強引な寸劇に教室は 言えず静まり返っていました。
その中で一人の女の子の独りつぶやきました。
「アカモリ×アオキか・・・悪くないわ」
「え?」
・・・
「ハァハァ・・・ちょっとどこに連れて行くんですか」
僕はアオキに尋ねます。
「屋上」
「な、なんで?」
「・・・お前シラサキのこと好きなんだよな?」
「え・・・いやあれは・・・」
そこでアオキは足を止めました。
屋上につながる扉の前。
「屋上にシラサキ呼んでるから」
「は、はぁ?どいうことですか?」
「あいつに今から告るんだよ、絶対成功するって!」
「いやいや、意味がわかんないですよ、なんでいきなり?」
アオキはまた突飛おしもない提案をしてきました。
「じょうがいないな、教えてやるよ」
アオキはどこから湧いて出るのか、自信満々な表情で語りだします。
「俺の情報によるとだな、あいつ女にしか興味ないらしいぜ」
「え、それほんと?」
何の前触れもなく告げられたシラサキさんの性指向に驚きを隠せないアカモリ。
「ああ、結構な目撃情報があるらしいからおそらく間違いない」
「そんなシラサキさんにそんな趣味が・・・」
「ああ、つまり女になったお前はチャンスってことだ」
「そんな!だからって急に」
「大丈夫、大丈夫!お前は可愛いからいけるって」
「意味わかんないですよ!!」
本当に意味がわかないけどかわいいという言葉についついうれしくなってしまうアカモリ。
ほんとちょろなさけない。
「とりあえずここまできたんだから告っちゃえよ」
「さすがに心の準備が・・・」
「しょうがないな」
アオキはそう言うといきなり扉を開けました。
そしてアカモリの背中強くボンッっと押ました。
いきなり押されたので思わず「わぁっ」と声を出してしまいます。
その声にフェンス越しに外の風景を眺めていた少女がこちら向きました。
「誰?」
「あ、あの・・・」
アカモリの顔を確認するように見つめる少女。
「もしかしてアカモリ…君?」
「は、はい」
アカモリはしどろもどろに答えることしかできませんでした。
「本当にアカモリ君なんだ。話には聞いていたけど本当に女の子になってるなんて」
どうやら噂はクラスを超えているらしい。
「それで話って?」
「その、あの・・・(うわ~どうすればいいんでしょうかこれ)」
「どうしたの?」
「いや、だからその・・・」
自分のじれったさに腹が立つほどもじもじしているアカモリ。
「・・・アオキ君にここに来るようにいわれてまってたんだけど・・・もしかして私なにか悪いことでもしたかな?」
「ちがう、それだけはちがいます!!」
「じゃあないかな?用って?」
「(これ以上は黙ってちゃダメです。ここは男らしく言ってしまいましょう)」
今思えば自分は今男じゃなかったがそんなことはどうでもいいと思い、
ただあるのはここで言わなければ後悔するという強迫概念しか今のアカモリにはありませんでした。
そしてアカモリは意を決して彼女に言葉を放ちます。
「す、好きです。前から好きですぅぇ・・・した、付き合ってください」
・・・大事なところで噛みました。
ものすごく恥ずかしいです。
おかげで自分だけどこか全く違う場所にいるような感覚におちいりました。