“正当化”?どいう意味だ?
そんなことを考えていたのは“あの”後だったか、前だったか。
目を覚ますと同じ場所にいた。
教室の扉がゆっくり開いた。
「おい、まだ教室に誰かいたのか!早く帰れ。」
先生?
「なにをボーッとしている?」
確か僕はこの担任の先生にさっき注意されてリコーダーの件がばれそうになって、あれ?
また?
「リコーダーの練習なら家でやれ」
「あ、はい」
同じようなやりとりがまた繰り返された。
もしそうなら次にまた彼女のリコーダーを舐めてたことがバレる?
「すぐ帰れよ。」
あれ?
バレない。
そのまま立ち去る先生。
どいうことだ?
少しボーッとしながら周りを見渡した。
黒板、
提示版、
教室の窓・・・
あっ!
僕はすぐに後ろを振り向いた。
教室の窓に女の子が写っていたからだ。
しかも間違いがなければその子はこのリコーダーの持ち主。
僕の好きな子。
・・・しかし後ろには誰もいない。
もう一度教室の窓に顔を戻す。
女の子が映っている。
間違いない。
その子だ。
あれ?
僕は?
僕が映ってない?
僕は驚いた。
窓に映ったその子も驚いた。
よくみるとその子はリコーダーを持っている。
僕もリコーダーを持っている。
もしかして?
いや、そんなはずは?
僕はリコーダーを一旦机に置き、自分の体のありとあらゆる部分を触った。
・・・
あるべきものがなく。
あるべきでないものがあった。
そして確信した。
いや確信せざるえなかった。
僕は今好きなあの子になっていた。
どうして?なんで?
これは夢なのか?
考えを巡らす。
たどり着いた場所はやはり先生の言葉。
『「いいだろう、すこしいじって“正当化”させてやろう。」』
あのとき何かされたのか?
本当に夢じゃないのか?
だが体の感触が妙にリアルだ。
本当にこれが自分なのか?
僕は確か好きな子のリコーダーを勝手に吹いててそれが先生にバレそうになった。
それがいまではその好きな子になって好きな子のリコーダーを吹いている。
あれ?
これって普通のことでは。
至って当然のこと。
至って自然なこと。
つまり僕のやってることは至って正当。
そうか僕は今僕の好きな子で、このリコーダーは僕の好きな子のもので僕の物でもある。
僕は妙に納得する。
そうだ。家に帰らなきゃ。
大好きな先生に怒られる。
うん?“大好きな先生”?
いやそうだ、私はさっきのあの先生が好きだから怒られたくないんだった。
僕はリコーダーをカバンにしまった。
あとは家で練習しよう。
先生に怒られる前に急いで帰った。
先生に褒められるように練習しなくちゃ。
僕は僕の好き“だった”彼女の家に帰宅した。