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季節はずれの願い事 1話

みなさんは七夕のお話はご存知ですか?



これは七夕にお話にでてくる彦星のちょっと季節はずれのお話です。
今日も牛を飼いならし仕事に精をだす彦星。



しかしその顔は浮かないものがあった。



「どうした彦星?元気がないじゃないか?」



声をかけてくださったのはこの天界をしきる神様でした。



白いひげを蓄えた神様は雲の上で座禅を組みながら話を聞いていた。



「いえ、今日、下界ではバレンタインデーという日らしいのでございます。



その日は女性が男性にチョコを上げるという風習があるのですが・・・」




「ふむ、つまりお前は織姫からチョコをもらいたいのだな」



神様なので察しがよく彦星の心情すぐに汲み取った。



「しかし今は年に一度しか会えません。どうしたらよいものかと。」



神様は顔しぶらせて答えた。



「まぁ、一度決めたことじゃからのう、そんなにたやすく一緒会わせることはできぬ」



「せめて会わなくてもよいのでチョコをもらうだけでもできなでしょうか・・・」



彦星は頭を下げて懇願しました。



神様はまた別の意味で顔を渋らせて答えた。



「ふむ、どうでもよいが織姫の作るチョコはのう・・・機織りは上手な娘なのじゃが」



織姫との仲なので察しのいい彦星はその言葉を聞いて自分の嫁が料理が苦手だったことを思い出した。



去年の七夕も織姫がいくつかいなり寿司を作ってくれたことがあった。が、見た目はいなり寿司だったが食



べるとすべて違う味で海水のように激辛だったりチョコより甘かったり



・・・挙句の果てには健康のためにと中身に南蛮渡来の超檄苦劇薬がはいっていた。



(結局何の薬だったのかわからないままその日一日寝込んだ記憶がある)



「な、なら僕が作るのでそれを渡してください。元々は男性から送るものだと聞いていますし。」



「じゃがどうやって渡すのじゃ?向こうへの贈り物は原則禁止じゃ。」



「そ、そんな・・・やっぱりだめなのか・・・」



彦星は残念そうにつぶやく。



そんな彦星の様子を見かねて神様はひとつ提案した。



「ふむ、ならお前が織姫になってチョコをつくればよいではないか」



彦星は一瞬何を言われているのか理解できなかった。



「つまりお前さんの魂を織姫の体にに移してその体でチョコを作るのじゃ」



「そんなおとぎ話みたいことできるんですか?」



「無論じゃ、わしを誰だとおもっておる」



ちょっと信じられないという顔でツッコム彦星にあくまで強気に語る神様。



「あっ、でもその間俺の嫁の魂はどうなるんです?」



「それはお前さんの体移ることになるじゃろうな、まぁその辺は心配ない」



彦星はあまりのとっぴおしもない方法にまだ信じきれないまま驚いていた。




「まぁ時間は限られているがな、半日くらいなら入れ替わっていられるじゃろうて」



彦星はまだしっくりこなかったがそれでも妻に自分からのチョコをあげられるのならということで



神様の話に大船にのったつもりで神様の案を受け入れることにした。



「神様、お願いします。その方法で僕の魂を妻の元へ!」



「うむ、よいじゃろう」



すると神様は懐から短冊を取り出しそれを持っていた杖に貼り付けた。



そしてゴニョゴニョと念仏のようなものを唱えたと思ったらいきなりばっと、杖を彦星の顔に向けた。



不意をつかれ驚いたが同時にすぐに彦星は眠りについた。

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