織姫の姿をした彦星は厨房の場所に着いた。
厨房の中は土間や竈が並べられていて自分の家にあるものより大きくまた数も多い。
しかし使い勝手はどうやら特には変わらない。
「よしやるぞ!」
そういって気合を入れる一声をあげて3秒ほどたった。
「材料はどこ?」
気合をいれたはいいが肝心なことを忘れたいた。
「そんなことだろうと思ったわい」
またなんの前触れもなく雲に乗った神様が現れた。
「ど、どうしよう材料がないですよ」
当然のごとくすがってくる彦星に神様は少しイタズラ心を働かせた。
「ふむ、わしの力で材料をだすことなど容易じゃが・・・」
「お願いしますよ、神様!」
「うむ、どうしようかのう?」
両目を閉じ考えるふりをしながら薄く片目をあけ織姫の姿をした彦星を見下ろす。
彦星は神様の目線を察知して何か思いついた顔をすると身につけていた羽衣の胸元を少し広げてみせた。
「お願いします。神様♡」
胸の谷間をわざとみせつけるようにしてさらにうるうるしたきれいな瞳で懇願した。
「しょ、しょがいないのう、まぁ出してやるかのう」
神様は鼻の下を伸ばしながら織姫の体を覗き込むように杖をふった。
すると机の上に光に包まれてチョコや砂糖やなにやらがまとめて現れた。
「ありがとうございます、神様!」
「なに礼にはおよばんよ、それよりもう少しだな・・・その近くで見せて・・・ってぬわぁぁ!」
神様は織姫の体をなめまわすように覗き込もうとしたしたあまり雲の上から落ちてしまった。
「大丈夫ですか?」
「心配いらん、もう一度雲の上に乗れば・・・あれ?」
「どうしたんですか?」
神様は雲の上に足をかけようとしたが雲からすり抜けてしまい登れないでいる。
「なぜじゃ・・・もしやわしに邪まな心があるというのか?」
「さっきまでめくちゃ邪まだったじゃないですか」
彦星が冷静に諭してきた。
「なんということだ、もう一度修行のやり直しじゃわい。」
そういってぶつくさいいながら神様はふわっと消えていった。
「あっ、いっちゃった・・・まぁいいか」
彦星はひとりで織姫の姿をして手作りチョコをつくることになった。