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狐に化かされて 六話

次に意識を取り戻したときには目の前に服がはだけ、ズボンがずり落ちて
いる親友が倒れるように寝ていた。当の自分も着衣が乱れ、赤い袴にどろ
どろの白い液体がこびりついていた。彼はその光景を見て狐の石像を背に
肩を落とすように座り込んだ。
「や、やってしまった…。」
「やってしまったものはしょうがない。」
石像は慰めているようだがどこかうれしそうだ。
「それよりもこれを。」
狐の石像は小さな光を出すとそこから暖かそうな毛皮の毛布を何もない空
間から取り出した。彼はそれをどうすればいいのかとは聞かず黙って親友
にその毛布をかけてやった。
なんとなく狐がして欲しいことが分かるようになっていた。
それでも彼の気持ちは晴れやかではない。
「どうして僕はこんなことをしてしまったんだ。」
狐から聞いた話によればどうやら狐を無理やり石像に戻した時、それが不
完全で最初に戻したときよりも多く狐の残留思念のようなものが彼の体に
へばりついてしまったようだ。その狐の想いが爆発し狐の旦那への愛に変
貌したということらしい。
「だがそれだけではない。お前の中にも親友を想う気持ちが多少なりとも
あったからこんなことになったのだ。」
「どいうことだよ。」
「わしの魂の一部がお前に取り付いていたとはいえそれだけではああはな
らない。わしの想いとお前の親友を想う気持ちが交わりあったがためにお前
の気持ちが変な方向に向かってしまったのだ。」
「俺が親友のことを愛していたってことかよ!」
「そこまでは言っていない。だがお前はわが旦那…いやお前の親友のことを
大切に思っていたのだ。」
「そんなことで…。でも俺は親友のことは好きだけどあくまで友情という意
味だからな。」
「そうだな…さっきまでは。」
「さっきまでは?どいう意味だ?」
「さっきの出来事でもしかしたらその友達とやらという思いが愛情とやらに
変わったかもしれんなぁ。」
狐はからかうように言ってくる。
「んなわけないだろ!!」
「そうかな、現にお前は親友と拒むことなく唇を交わしていただろ。」
「だからそれはお前の気持ちがそうさせて…!」
「それはどうかな?我は旦那様のことは愛していたが接吻はそんなに容易く
許したことはなかったぞ。」
「そ、そうなのか…」
「それに、狐にとって尻尾は愛情の象徴とも言われている。それを意図も
容易く触らせるなど…。」
「それは知らなかっただけで…。」
「いや、わしの思念の一部とはいえその魂の記憶が残っているはずだ。記
憶が残っていれば尻尾を触らしてはいけないと言う気持ちが芽生えたはず
だ。愛していなければ。」
前にも言ったが狐は昔から人を騙すのが得意だった。
狐の言うことは所々が嘘であり、所々が本当であった。
だが彼はそのすべてを本気で疑い、すべてを本気で真実なのではないかと
思い込んでしまった。
そのために彼は頭を抱えこむほど悩んでしまったのだ。
「み、認めたくない。」
「認めたくないというならお主は巫女としていや女として生きるべきじゃ。」
「どいう意味だ。」
「お前がその男とヤッてしまったことで愛が芽生えたことを否定したいという
なら、方法はある。わしが魂の残りのすべてをわしに返して純粋な女と
なって、それでも親友のこと親友と呼べるかどうか確かめればいい。」
何かだまされているような気分だったが、どうしても親友が親友でなくなるこ
とのほうがより恐怖を感じた。
「はっきり言ってこのまま男に戻れば、親友とどう付き合えばいいか分から
ず後悔することになるかもしれんぞ。」
「そ、それは…。」
「まぁいい。とにかく、お前の中にある残りの『わし』を返してくれんか。」
「…わかったよ。」
考えるのに疲れ始めた彼は狐の言うままに残りの狐の魂を手順を踏んで
石像に返した。
終わると彼はただの十六~十八くらいの巫女服を着た女の子になっていた。
尻尾はもちろん耳もない。
「よしでは、これからどうする?男にもどるか?」
煽るように狐は尋ねた。
「…ちょっと待ってくれ。」
この時、石像の狐が心の中でにやりと笑っていたことは当然彼は気づける
はずもない。
「いいだろう、だがひとつだけ知っといてもらいたいことがる。」
狐はまた巧みに真剣な声に変えた。
「我ら神は信仰心があることで存在する。もしもわしの信仰心を失えば通力
はすべて失われただの石像になってしまう。そうなればお主を男に戻すこと
はできん。」
「な、なに!」
彼は素っ頓狂な声を出したが狐は間を取ることなく話し続ける。
「だからお主に頼みがある。」
「頼み?」
「とりあえずの間でいい。神社が廃れてしまっては困る。だから参拝者が
来るようにそのまま巫女として仕事をして欲しいのだ。」
「え、それは…。」
「代わりはまたあとで探す。とりあえずの間でいい。」
「いや、でもな…。」
「お主の親友についてこれからどうするか考える期間だと思えばいい。
わしが存在する間ならいつでも男に戻してやるぞ。」
彼は腕を組んで考えていた。
「それにおぬしもわしがいなくなっては困るであろ?もう選択の余地はある
まいて。」
選択の余裕なら本来はあったがそう断言されると人間とは流されやすい
生き物で「…分かった。」と腹を決めたように承諾してしまった。

こうして『彼』は、いや『彼女』はこの神社のめでたく巫女となったのだ。
いつまで巫女としてこの神社に居続けたのか、親友とはその後どうなった
かは少なくとも著者である私は知らない。だが神社に可愛い巫女がいると
いう評判で知名度あがりその後も「経済的にも」栄えたというのは事実である。

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