魂。
それは人一人に一つだと世間で思われがちだがそうではない。
実は人間よっては魂は複数存在する。
それはそれぞれの体の一部に定着している。
例えば
よく野球選手などが豪腕投手と言われたり、
料理人が黄金の右腕などと呼ばれることがあるのは
腕そのものに魂が込められているからである。
そんな一文字 大吾も複数の魂を所持する人間のひとりであった...
「フガァー!!フガフガァ~(いってきます!!)」
俺はそう言ってピーナッツバターを塗った食パンを
口に咥えて玄関を飛び出した。
見ての通り今は時間がないので走りながら
ここで俺の自己紹介だけしておく。
俺の名前は一文字 大吾!
高校生。
好きな食べ物はじゃがいもスティックポテト(バター味)というお菓子。
嫌いな食べ物は梅干。
趣味はエロゲーとAV鑑賞。
最近話題のエロゲーがもうすぐ発売されるということで只今絶賛オナ禁中。
おかげで体の調子がすこぶるいいが早くエロゲーやりてぇ~!!
「いでぇ!!」
つい調子づいて走っていると曲がり角で他人とぶつかてしまったようだ。
「わりぃ!急いでたもんで」
俺はとっさに両手で手を合わせて謝った...はずだった。
しかし自分の視界の目の前には
自分の左手だけが手を広げて謝ったていただけだった。
あれ?ちゃんと両手を合わせて謝ったと不思議に思ったが
些細なことと気にも止めなかった。
だが次の瞬間、
思わぬ方向からものすごい勢いで殴られた。
「もう、痛いじゃないの!!」
俺は最初ぶつかった相手に殴れたかと思った。
「いきなりなにすんだよテメェ!!...ってあれ?」
さすがに殴られるまでの筋合いはないと思い、
文句をつけようと思ったがぶつかった相手はまだ倒れている。
じゃあ誰に殴れたんだとまた不思議に思い何気なく
自分の右手をみた。
「私はここよ。あなた節穴なの?」
...なんと自分の右腕が喋っていた。
「な、なんで俺の右腕がしゃべっているんだ?」
「はぁ~?意味わかんない!
私はあんたの右腕なんかじゃ...ってあれこれナニィィィィィィ!!」
俺の右腕は悲鳴をあげた。
別に痛いとかそいう意味じゃない。
不可解極まりないこの状況で察しのいい俺はひとつの仮説を立てた。
そしてその仮説を確かめるために右腕に問いかけた。
「お前まさかそこに倒れている女か?」
そいうと俺の意思に関係なく勝手に右手が動き出す。
手のひらは倒れている女性に向いた。
そして黙ってうなずいた。
正確には手首が動いただけなのだが。
どうやら俺の仮説は正解のようで、
ぶつかった女の子は俺の右腕になってしまったらしい...
「ど、どうして...こんな...」
「俺に言われたって。」
すすり泣きそうに俺の右腕が嘆いている。
言葉にするとなんとも厨二臭いが言葉通りの意味である。
そんなときだった。
倒れていた女の体が起き上がろうとしていたのだ。
「ううっ、あれ?ここは?なぜご主人様が目の前に?」
メイドカフェ以来聞き慣れていない台詞をしゃべるその倒れていた女の体。
「お、お前何者だ!」
俺は不可思議な恐怖心と興味心で警戒しながら尋ねたが
その子は照れるような素振りをみせつつも何くわぬ顔で答えた。
「いやだなぁ~あなたの“右腕”ですよ」
「「なんだって!!」」
俺と俺の右腕が同時に叫んだ。
どうやら俺の右腕とその女の子は入れ替わってしまったようだ。
...そしてこれは俺たちの奇妙な体験の幕明けでもあった。