はっきりいって笑いをとるための冗談で言った一言だ。
「(わかった、その願い叶えてしんぜよう。)」
その問いにくそまじめに誰かが答えた。
しかしそれはそこにいた娘でも母さんでもない。もちろん息子でもない。
「私だ、私がその願いを叶えてやる」
その先にいたのはTVの棚にある青いたぬきの置物だった。
なんで置物がしゃべって?
そんなことを考えているうちあたりに光が差し込んだ。
「うわっまぶしっ!」
手で顔覆うと光も霧のように周りが見えなくなるほど覆われた。
・・・。
しばらくして光が晴れてきた。
「なんだったんだ?」
俺が部屋の周りをみると特に部屋は変わった様子はないみたいだ。
キッチンには母さんが朝ごはんを作っている。
あれ妹の方がいない?
もう部屋にもどったんだろうか?
「なぁ母さん妹は?」
「もうすぐ時間だから起きてくるんじゃない?」
あれ、さっき起きてたような。
不思議に思い壁に掛けてある時計に目をやった。
7時57分。
あれ時間が戻ってる?
わけがわからないままぼーっとしているとまた声が聞こえた。
あの青いたぬきの置物みたいだ。
「時間を戻してやった。ちゃんと願いも叶えってやったからな。ただ多少この世界に変化があるかもしれんが・・・」
え?
疑問に思っていると
階段から足音が聞こえた。
妹の方だった。
「おはよう」
「おはよ」
朝の挨拶だけ交すとソファーに座りTVのチャンネルをつけた。
「もしかしてまた仮面ライターをみるのか?」
「はぁ?父さん何言ってるの?私が仮面ライターなんてみるわけないじゃん、お兄ちゃんと一緒にしないでよね」
へ?
あれ、どうなってるんだ?
妹はあんなに仮面ライターのこと好きだったはずなのに見ないなんて。
もしかして本当に??
父が半信半疑であっけにとられているあいだにTVが始まった。
『「12人でプリティ キュアキュア ハジマルヨ~♡」』
「あれプリティキュアキュア?これって8時半にやるやつじゃなかったけ?」
「何勘違いしてんの?これ8時にやるやつだよ?ちょっと、うっとしいから黙ってくれる?」
どうもよくわからないが時間帯が変わっているようだ。
「あ~ん、この卯月ちゃんかわいい。お母さんもみて」
「ほんとね、でもこの如月ちゃんって子もしっかり真面目な子で素敵だわ」
「父さんはこの皐月ちゃんが可愛いと思うな」
「いや父さんには聞いてないから」
どうやら父に対する扱いは変わってないらしい。
『「プリティ~チェンェェンジ!!」』
どうやら女の子達が変身するシーンだ。
それにしても露出が多く目のやり場に困る演出だ。
しかし妹は目をキラキラさせてみている。
「(貧乳幼女っていいな)」
「え?なんかいったか?」
「うん、なんでもないよ」
ぼそっと妹がつぶやいみたいだがなんだったんだろう。
そんな疑問をよそに女の子達がまた悪いモンスターの攻撃受けている。
さっきと同じシーンだ。
しかしながら子供向けのくせにこのモンスター攻撃の仕方が触手やらなんやらでいちいち卑猥だな。
服も破けてアレがみえそうで・・・。
「あなた、TVを下から覗いてもみえませんよ」
「え・・・!いや別に覗いてないよ、あれだよ、TVの配線が気になったんだよ。そうそう」
「お父さんきもい」
かなり苦しいいいわけになってしまった。
何気に娘の言葉も痛い。
だが気のせいか俺にそんなひどい言葉を吐いたわりには娘はこの敵にやられているシーンを笑顔で、
いや、にやつきながら眺めていた。
お前もなんかキモいぞ。
そういえば息子もさっきまではこのシーンで・・・。うん?
もしかして・・・そっち系の趣味も交換されて・・・。
嫌な予感がした。が受け入れたくないというのもあったんだろう。
気のせいだろうということであまり深く考えないでおくことにした。
そしてヒロインが必殺技を決め、決めゼリフを言うとEDになった。
EDではヒロインの女の子たちがCG技術でダンスをしていた。
娘はそれも一生懸命食い入るようにみていた。