ある日曜日の朝。
「かあさん、まだ子供たちは寝ているのか?」
「そうみたいね。」
妻はフライパンでなにか炒めながら答える。
「起こさなくていいのか?」
「いいわよ。別に。勝手に妹がそろそろ起きてくるわ」
そういって時計みながら答えた。
「“勝手に”ってなんだよ」
時間は7時57分。
そういうと階段の方からドタドタゆっくりと足音が聞こえた。
「おはよう」
「うん、おはよ」
階段から降りてきたのはまだおさない顔が残るが性格は生意気になってしまった中学生の娘。
娘はリビングにあるソファに座るとTVのチャンネルをつけた。
『「仮面ライターファイブン!タイマン大好きだぜ!」』
「また仮面ライター見てるのか」
「いいじゃん別に」
「女の子なのに仮面ライターなんかみて困ったもんだ」
「最近のはイケメン俳優が多いのよ」
妻が女の味方としてフォローを入れる。
「なんだイケメンの俳優さんがそんなに好きか?うん?」
俺は最近かまってくれない、かわいい、かわいい娘に取り入ろうとねちっこく聞いてみた。
「父さんには関係ないでしょ」
軽くキレ気味であしらう、かわいくない娘だ。
「なんだ冷たいな。父さんの方がイケメンだぞ」
「ふっ・・・ん」
鼻で笑うとはひどい。いやいつものことか。
「はいはい、お父さんはイケメンですね」
妻が夫のメンツのためにフォローを入れる。
さすが俺の嫁。
『「クソッ・・・ここまでか・・・」』
「やばっ・・・健太君かっこいい///お母さんも見て!!」
「あら、この子可愛いわね、でも主人公のこの子も素敵じゃない」
「え~絶対健太君の方がかっこいいって目も細くてキリリってしてて二の腕とか太くてもう抱きしめられい!!!!!」
「よ~しじゃあお父さんが代わりに抱いてあげよう」
「やめてください、鳥肌立つから」
普段、親に敬語なんて使わない娘がここぞとばかりこんな言葉で拒否をする。
いつから娘という生き物はこんなにも父親のことを毛嫌いするようになってしまったのだろう。
もっと尊敬してくれてもいいのに。
そんなことを右手で顎押さえ芥川龍之介の肖像画のように立派に悩みこむが娘には尊敬どころか眼中にもはいらないようだ。
「でも弦二郎君もかっこいいわよ。髪型とかワイルドでお兄ちゃんにそっくり。」
「うぇ~。お兄ちゃんに似てるとかないわ~」
「いいじゃない、お兄ちゃんかっこいいでしょ。」
「全然かっこよくないよ、お兄ちゃんなんてただキモオタじゃん」
「こら。お兄ちゃんの悪口言わないの」
「ちぇ。」
俳優と比べられて勝てるわけがないのに。
同じ男として同情するぞ。
そんな、うちの息子と比較された健太君は変身して怪物と激闘している。
『「くそ、俺のライターキックが効かないなんて・・・!どうすればいいんだ!!」』
どうやら苦戦回らしい。
「きゃー負けないで!」
「たかがTVで・・・」
「うっさい!」
娘に一喝いれられた。
へいへい。と思いながらも
なんだかんだで女の子っぽく叫ぶこともあるのかともくだれぬことで感心させられた。
『「果たしてファイブンは悪の組織を倒せるのか」』
『「次回もみてくれよな」』
次回ナレーションが入り、どうやら前後編で番組が終わったようだ。
すると妹は朝ごはんを食べるためにソファから立ち上がりテーブルへと移動した。
黄色い声できゃーとか叫んだあとは、飯を食べるときは黄色い声できゃっきゃっぺちゃくりだす。
うるさいなどと、あんまりつっこむとまた何を言われるかわからいので何も言わないでおくことにした。
「よしニュースでもみるか」
俺が仕切りなおしでTVのリモコンに手をかけようとした。
するとまた階段からドタッドタッと勢いよく音がした。
「ちょ、そのままでいいって!」
階段から現れたのは息子のほうだった。