プルルル・・・
「もしもし」
少し待機音が長かったがつながった。
しかも男の声だ。
「あの・・・・」
この場合なんといえばいいのだろ?
相手に対して「自分ですか?」て聞くのもおかしいし。
「あなたは誰ですか?」っていうのも失礼な気がする。
そうこうして口ごもってしまっていると意外にも向こうから口火を切ってくれた。
「あなたもしかして私だよね?」
一瞬、意味がわからなかったが自分がさっきまで似たようなことを言おうとしたことから、もしかしたらと思った。
「あの、もしかして入江 佳奈美”さん?」
「そうそう!よかったぁ~自分の携帯番号からかかってきたからもしかしたらと思ったのよねぇ。
とりあえずおめでとう”!」
男はおかまみたいな口調でテンション高めにしゃべった。
しかしそれ以上に気になったのは最後のおめでとう”という言葉である。
「あの~おめでとう”って?」
「ああ~ごめんごめん!まぁ話せば長くなるんだけどこれは実験なの。つまり・・・」
つまり俺は話によると試されたらしい。彼女・・・といよりこの身体の持ち主、
入江 佳奈美さんは『トランス総合研究所』のチーフらしい。
彼女らの実験は人間の性別の変更や脳の電波を他人と入れ替えるといったちょっと変わった研究をされている人たちなのだ。
そこで俺はなんの知らせもなく自分の身体とその彼女の身体を入れ替えをさせられたのだ。
「そしてどのタイミングで自分に気づけるか?どんな反応をするか研究のために楽しみながら観察させてもらったわけ」
「今おもいっきり楽しむ”とかいいましたよね?」
「まぁ細かいこと気にしないで、おかげでいいデータとれたから」
「そんな俺を騙しておいて!」
原因がわかってひとまず安心はしたがそうとわかると知らず知らずに踊らされていたようで腹が立った。
「いいじゃない。女性の身体にならたのよ。楽しめたでしょ?」
「そんなことない!」
「あら?じゃあこれは何かしら?」
そいうと突然部屋のTVがついた。
TVの映像には上から見たベットから起き上がる女性の姿が見えた。
「これは・・・?」
「実は部屋に監視カメラが設置してあるの。もちろんあなたを観察するためにね。」
男の声はイタズラっぽい含み笑いをしていた。
つまりこれは彼女の身体だが中身は俺の動画ということだ。
そう気づいたときにはTVの中の女性は胸に手を近づけて乳首をつかみ始めた。
「ちょっ・・・やめ・・・」
自分の身体ではないが自分がやった行為に恥ずかしくなった。
「あら?私の身体でなにをやったのかな?」
「わ、分かったから!は、はやくけしてくれ!」
「ええ?もうういの?ま、もうちょい楽しみたかったけど次の実験もあるしね」
そいうとTVの画面がプツンと切れた。
俺はまだ動揺したいた。なんだかアダルトビデオを見る感覚とは違い親が撮ってくれた自分の運動会のビデオを見ているように恥ずかしい気分だった。
自分の身体じゃないのに。
「さて身体は返すわ。枕の中に錠剤が置いてあるからそれを飲めば元に戻るわ」
なんでそんなところにあるんだ?
そんなことを考えたがとにかく早くもとに戻りたかったのでベットに戻り枕のチャックをあけてみた。
すぐにプラスチックケースに入った薬を見つけた。
「これを飲むだけでいいの?」
「そうよ!水なしで飲めるから安心して。」
そう電話越しに伝えられるとケースから一粒取り出し思い切って薬を飲み込んだ。
しばらくすると急に眠気が襲いベットの上ということもあってすぐにその場で寝てしまった。
「・・・・お疲れ様・・・・。」
最後の言葉は俺には届かなかった。