町外れに小さな家がありました。
そこにひとりの男の子、アカモリが住んでいました。
彼は真面目で優しかったが強面の顔と逞しすぎるといってもいいガタイのせいで友達が少くなかったのです。
彼がちょっと町へ外に出れば周りの人間は一歩距離を置いて歩きます。
不良からも距離を置かれるか、逆に睨みつけていると勘違いされて喧嘩を売られることもしばしばありました。
子供からも当然怖がられ、ただ微笑み返したつもりがわんわん泣かれて親の元へ走っていく様を見たときは
さすがに心が折れそうだったとか。
そんな彼だが唯一の友達、アオキという男がいました。
「よう、アカモリ!ゲーム借りに来たぜ」
「はい・・・。」
「なんだあんまり元気そうに見えないじゃないか!どうした?」
「うん、ちょっとですね・・・。」
アカモリは歯切れの悪い言葉で返しました。
「なんだよ、彼女でも欲しいのか?」
「彼女もほしいんですけど、友達の方が欲しいですね」
「なんだよ、俺じゃ不満なのかよ」
「そうじゃないですけど、もっといろんな人のこと知りたいかなって思いまして。」
「そっか・・・俺はてっきり隣のクラスのシラサキのこと考えてたと思ったよ。」
「な、なななんで僕がシラサキさんのことなんか・・・・」
「わかりやすいやつだな。お前ほどカマかけやすいやつもいないな」
「か、からかわないでくださいよ」
「すまん、すまん・・・まぁ友達もできるといいよな」
「うん、でも僕こんな怖い顔してるから彼女どころか親友とかもできないんでしょうね」
「そんなことねぇよ!!お前みたいないいやつなら彼女でも友達でもできるさ!」
「そうですかね?」
「そうだよ!」
アオキはアカモリを景気よく慰めました。
このアオキという男は以前アカモリに助けてもらったことがありました。
アオキはそこまで胆の据わった男というわけではなく、よくいじめっこに金銭をむし取られることがありました。
その日も校舎裏でいじめっこにカツアゲされていると、偶然アカモリが通り過ぎたのです。
アオキがカツアゲされる姿みて思わずアカモリはすごい形相で「やめなさい!」と声を張り上げました。
もちろん本人はそんな怖い顔をしたつもりありません。
たったそれだけのことでしたがいじめっ子はアカモリの形相があまりにも怖くて逃げていきました。
それ以来アオキはアカモリに仲良くなり、なにか恩返ししたいと思っていました。
「よし、俺がお前の彼女みつけてやるよ」
「え?そんな僕のことなんか気遣わなくていいですよ」
「いや、探してやる。じゃあな」
そういってさっさっと自分で決めてしまい、アオキはゲームを借りる用を済ますと自分の家にとっとと
帰って行きました。